5S・整理整頓

5S 事例 ビフォーアフター10例
建設現場の改善を写真と数字で示す

2026年9月9日  |  読了目安 約13分  |  対象:現場代理人・職長・安全衛生責任者

建設現場の5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)は、語られる頻度の割に「現場で何がどう変わったか」を写真と数字で示せている事例が驚くほど少ない。標語ポスターを貼って終わり、月次パトロールでチェックリストに丸を付けて終わり、という運用に陥ると、5Sは現場の安全文化に何も残さない。労災ゼロ・不適合ゼロを掲げる以上、5Sは「片付け運動」ではなく「災害の芽を物理的に潰す活動」として運用する必要がある。

本記事は建設業の現場代理人・職長・安全衛生責任者を対象に、建設現場で頻出する10領域の5Sビフォーアフター事例を、状況・改善・効果の3列で具体的に整理した。あわせて写真説明文の書き方、月次パトロールでの確認方法、AnzenAIが開発予定としているAIによる画像比較機能までを実務粒度で示す。

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目次
  1. なぜ5Sの「ビフォーアフター」が建設現場で重要か
  2. 5S改善ビフォーアフター10例(建設現場版)
  3. 写真説明文の書き方:効果が伝わる5項目
  4. 月次パトロールでの確認方法と定着の仕組み
  5. AnzenAI活用と開発予定の機能(AI画像比較)
  6. よくある質問

なぜ5Sの「ビフォーアフター」が建設現場で重要か

5Sは製造業から建設業に持ち込まれた活動で、整理(要らないものを捨てる)・整頓(必要なものを使いやすく配置する)・清掃(汚れを取り除く)・清潔(整理整頓清掃の状態を維持する)・しつけ(決められたルールを守る)の5段階で構成される。建設現場では工程が進むにつれて資材・工具・廃材・仮設物が増減するため、製造業の固定ライン以上に5Sの維持が難しい。

「写真1枚」が現場を動かす理由

5Sを言葉だけで指導すると、職長や作業員には抽象論にしか聞こえない。「もっと片付けろ」と100回言うより、自現場のビフォーアフター写真を1組見せた方が行動が変わる。建設業の現場では、危険箇所の指摘も同様に「写真で示す」のが最も強い。災害発生の8割以上が不安全状態と不安全行動の組み合わせで起きており、不安全状態の多くは5Sの不徹底が背景にある。ビフォーアフターを蓄積することは、不安全状態を物理的に潰した記録そのものだ。

5Sと労災防止の関係
建設業の死傷災害のうち「墜落・転落」「転倒」「飛来・落下」「激突」の4類型は、現場の整理整頓状態と密接に関係する。通路に資材が放置されていれば転倒し、足場上に工具が散乱していれば落下し、開口部周辺が散らかっていれば墜落リスクが上がる。5Sは安全管理の補助活動ではなく、災害4類型の主要な予防策と位置づけて運用すべきだ。

ビフォーアフターを「効果」までセットで示す

5S事例の発表でよくある失敗は、改善前と改善後の写真だけを並べて「きれいになりました」で終わってしまうことだ。効果まで定量・定性で示さなければ、他現場への横展開が起きない。状況(何が問題だったか)→改善(何をどう変えたか)→効果(どれだけ安全・効率が向上したか)の3列で整理することで、ビフォーアフターは初めて「使える事例」になる。

5S改善ビフォーアフター10例(建設現場版)

建設現場で頻出する10領域について、状況・改善・効果を整理した。自現場に当てはまる事例から横展開を始めるのが現実的だ。

No. 領域 状況(ビフォー) 改善(アフター) 効果
1 工具置き場 電動工具・手工具が混在し床置き。誰のものか不明で紛失も頻発 姿絵(影絵)板と所有者ラベルを設置。電動工具は専用ラックで充電と一体化 朝の工具探しがゼロに。紛失減で月◯千円の損失防止、躓き転倒リスク低減
2 開口部周辺 床開口の周りに資材・廃材が積まれ、墜落防護柵が一部撤去のまま 開口部から1m以内を立入禁止ゾーン化し赤テープでライン引き。柵は施錠式に 墜落リスク要因を物理的に排除。開口部起因のヒヤリハット件数が大幅減
3 足場上の通路 足場板上に資材・工具が散在し、有効通路幅が30cm未満 足場上の資材置き場を区画し、有効通路幅60cm以上を黄色テープで明示 通路通行時の躓き転倒・墜落リスク低減。職長の朝の指示時間も短縮
4 化学物質保管 溶剤・接着剤・防水材が一般資材と混在保管、SDS掲示なし 専用キャビネット(換気付き)に集約、扉にSDS QRコードと混合禁止表示 引火・中毒リスク低減。化学物質関連の労基署指摘ゼロ、緊急時対応の迅速化
5 ヘルメット置き場 事務所入口に山積み、紐切れ・割れの不良品も混在 個人別フックと氏名ラベルを設置、月1回の点検タグで不良品を即時隔離 不良ヘルメット使用ゼロ。来場者用と個人用の区別が明確化、感染症対策にも有効
6 配電盤周辺 配電盤前に資材・工具が置かれ、緊急遮断時にアクセスできない 配電盤前1mを黄黒テープで立入禁止ゾーン化、操作者氏名と緊急連絡先を表示 感電・漏電時の即時遮断が可能に。電気火災発生時の初動時間を短縮
7 休憩所 飲料缶・弁当ガラが放置、空調フィルター詰まりで熱中症リスク 分別ゴミ箱を3種設置、フィルター清掃を月次パトロール項目に組込 休憩所の温度低下、熱中症一歩手前のヒヤリハット減、衛生管理レベル向上
8 書類棚(現場事務所) 安全書類・施工図・SDSが混在、緊急時に必要書類を探すのに時間がかかる カテゴリ別色分けファイル+目次台帳。SDSはQRコードで即呼出 緊急時の書類検索時間を◯分→◯秒に短縮、労基署立入時の対応も迅速化
9 車両駐車 来場者車両・職人車両・元請車両が混在、緊急車両動線が確保できない 区画線と表示板で用途別駐車スペースを明示、緊急車両動線を常時確保 救急車・消防車の進入動線確保、来場者の迷いも解消し受付対応がスムーズに
10 ゴミ集積場 分別不徹底で混合廃棄物化、廃材から釘が露出し作業員が踏み抜き受傷 木くず・金属・廃プラ・産廃の4分別ボックスと釘抜き作業エリアを併設 踏み抜き災害ゼロ、廃棄物処理コスト低減、マニフェスト管理も明確化

出典:建設業労働災害防止協会の安全パトロール指針および現場安全衛生協議会の改善事例集をもとにAnzenAI編集部で再構成(数値は現場規模により変動)

10例に共通する3つの設計原則

10事例を俯瞰すると、効果が出る5S改善には3つの共通点がある。第一に「物理的にできなくする」設計(立入禁止ゾーン化、施錠式柵、専用キャビネット)。第二に「誰の責任か明示する」設計(個人別ラベル、操作者氏名表示、点検タグ)。第三に「異常がひと目で分かる」設計(姿絵板、色分けファイル、黄黒テープ)。標語や注意喚起ではなく、設計で行動を方向づけるのが5Sの本質だ。

写真説明文の書き方:効果が伝わる5項目

5S事例を社内で横展開する際、写真と並ぶ説明文の質が成否を分ける。説明文が抽象的だと「きれいになりましたね」で終わり、他現場で再現されない。効果が伝わる写真説明文には次の5項目を含める。

写真説明文に必須の5項目

悪い例と良い例

悪い例:「足場をきれいにしました。安全になりました。」――場所も対象も具体策も効果も分からないため、他現場では何を真似ればよいか不明だ。良い例:「2階躯体足場北側通路の資材区画化。改善前は通路幅30cmで作業員2名がすれ違えず躓き多発。改善後は黄テープで資材置場と通路(60cm幅)を分離。1か月間で通路起因のヒヤリハット報告ゼロ。足場有効幅80cm以上の現場で再現可能。」――場所・状況・改善・効果・横展開条件が揃い、他現場の職長が即日真似できる。

個人情報・機密情報の写り込みに注意
5S写真を社内共有・社外発表する際は、作業員の顔・氏名札・図面・発注者名・近隣住居などの写り込みに注意する。撮影時に角度を選ぶ、必要に応じてモザイク処理を施す、共有範囲を明確にするといった運用ルールを事前に定める。建設業の現場写真は機密度が高く、SNS流出が事業継続リスクに直結する場合もある。

月次パトロールでの確認方法と定着の仕組み

5S改善は実施した直後がピークで、放置すれば1〜2か月で元に戻る。建設現場のように工程が進むほど資材・人員が入れ替わる環境では、定着の仕組みを最初から組み込まなければ意味がない。月次パトロールを5S定着の中核に据える運用が現実的だ。

月次パトロールのチェックリスト設計

月次パトロールでは、10事例の各領域に対応した3〜5項目のチェックポイントを用意する。例えば工具置き場なら「姿絵板に欠品なし」「所有者ラベル全数記載」「電動工具の充電が定位置」「不要工具の混入なし」の4項目を◯△×で評価し、△以下があれば是正期限を即日設定する。重要なのは「点検したこと」より「是正完了したこと」を月次でトラッキングすることだ。

月次パトロール段階 担当 主な確認内容
第1段階:朝の自主点検 各職長(毎朝5分) 自工区の前日との差分、是正未完了項目の進捗
第2段階:週次パトロール 元方安全衛生管理者 10事例のチェックリスト全項目、新規発見事項の記録
第3段階:月次合同パトロール 所長+協力会社代表+安全衛生委員 月内の是正完了率、横展開候補の選定、ベストプラクティス共有
第4段階:四半期トップ層点検 支店長または本社安全部長 5S取組の年間傾向、表彰候補現場の選定、改善投資判断

出典:建設業の元請各社の安全衛生管理規程およびISO45001ベースのパトロール体系をもとにAnzenAI編集部で整理

定着の鍵は「表彰」と「横展開会議」

月次パトロールで優れた改善事例が出ても、評価されなければ職長のモチベーションは続かない。月次安全衛生協議会で「今月のベスト5S」を表彰し、その事例を翌月に他工区へ横展開する流れを定例化する。表彰は商品券や図書券など実用品で十分機能し、表彰された職人は次の改善も自発的に進めるサイクルが生まれる。逆に△×項目が3か月連続する箇所は、設計から見直す対象として安全衛生委員会で議論する。

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AnzenAI活用と開発予定の機能(AI画像比較)

5S活動で建設業の現場担当者が抱える共通の悩みは、「写真を撮るのは簡単だが、説明文を書く時間がない」「ビフォーアフターを並べて社内共有する資料づくりが面倒」「月次パトロールのチェックリストを毎回ゼロから作っている」という3点だ。

AnzenAIは現状、建設業の現場で必要なKY活動表・新規入場者教育資料・リスクアセスメントシートをAIが自動生成する。5S活動に関しては、月次パトロール用のチェックリスト、改善事例の写真説明文の起案、横展開向けの社内共有テンプレートを出力できる。撮影した写真と改善内容のメモを入力すれば、状況・改善・効果の3列構成で説明文をAIが下書きするため、職長は最終確認と数値の差し込みだけで済む。

開発予定:AIによる画像比較機能

さらに踏み込んだ機能として、AIによる5S画像比較機能を開発予定として計画している。具体的には、改善前と改善後の写真をアップロードすると、AIが画像内の差分(資材配置の変化、通路幅の変化、表示物の追加・削除など)を自動検出し、説明文の素案に反映する機能だ。月次パトロールの定点撮影画像を時系列で比較し、5S状態の劣化を早期に検知するアラート機能も併せて期待される。

現時点では「開発予定」の段階であり、リリース時期は今後の開発状況に応じて確定する。まずはAIで起案された説明文・チェックリストをベースに、現場の運用ルールを上書きしていく形で活用を始めるのが現実的だ。労災ゼロ・不適合ゼロの安全文化に向けて、5S活動の記録・共有・横展開を一連の仕組みとして組み立てていきたい。

5S改善事例の記録と横展開はAnzenAIで効率化

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よくある質問

5Sビフォーアフターを社内発表する頻度はどれくらいが適切ですか?

月1回の安全衛生協議会で「今月のベスト5S」として2〜3事例を紹介するのが現実的です。年に1回まとめて発表する形だと記憶が薄れ、横展開のタイミングを逸します。月次で小さく回し、四半期ごとに横展開状況を点検する2層構造が機能しやすい運用です。

5S改善の効果を数字で示すのが難しい場合はどうすればよいですか?

数字が出せない場合は定性表現で構いません。「通路通行時のすれ違いストレスがなくなった」「夜間照明下でも工具の所在が一目で分かる」「協力会社の新規入場者でも迷わず動ける」など、現場で働く人の実感を職長や作業員にヒアリングして記載します。定量と定性は組み合わせて使うのが標準的です。

5S活動が3か月で形骸化してしまいます。何が原因でしょうか?

最大の原因は「点検したが是正完了を追わない」運用です。月次パトロールでチェックリストに△×を付けるだけで終わり、是正期限・担当者・確認方法を文書化しないと、翌月には同じ指摘が出続けます。是正完了率を月次の管理指標に格上げし、未完了が3か月連続する箇所は設計から見直す仕組みを組み込むのが有効です。

小規模現場でも10事例すべてに取り組むべきですか?

必要ありません。自現場で災害リスクの高い領域から3〜5事例に絞って始めるのが現実的です。例えば内装工事中心なら工具置き場・化学物質保管・休憩所、土木中心なら開口部周辺・車両駐車・ゴミ集積場というように、工種に合わせて選びます。10事例を一度に動かすと現場が疲弊し、結局どれも定着しません。

5S写真をクラウドで管理する際の注意点はありますか?

建設現場の写真は機密情報を含むため、社内クラウドのアクセス権限設定と保存期間ルールを事前に定めます。発注者名・図面・近隣住居・作業員の顔と氏名札の写り込みには特に注意し、必要に応じてモザイク処理を施します。SNS共有は原則禁止とし、社外発表は発注者・本社広報の事前承認を取る運用が一般的です。

まとめ:5Sは「写真と数字」で語る活動に進化させる

5Sビフォーアフターの蓄積は、その現場が労災ゼロ・不適合ゼロの安全文化に近づいているかを最も正直に映す鏡だ。10事例を自現場に重ねて、まず3事例から月次パトロールに組み込むことから始めてほしい。3か月後の写真と数字が、現場の本気度を物語る。

参考情報
國分 良太

著者

國分 良太

制御設計エンジニア → AI・IoT・DX推進|AIコンサルタント|東京の製造業メーカー開発部門

製造業の現場で設備設計・改善プロジェクト・品質向上施策に従事。なぜなぜ分析(RCA)やリスクアセスメントの実務経験をもとに、現場DXを支援するアプリケーションの開発と情報発信に取り組んでいます。AIコンサルタントとして、企業のAI・生成AI活用や現場DX導入の支援も行っています。

詳しいプロフィール →  ・  LinkedInXnote

※ 本サイトは所属企業とは関係のない個人活動です。記載の見解は筆者個人のものです。

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